さて前編では京都から特急しなのに乗って信州へ。八ヶ岳・野辺山高原への入り口、JR小淵沢駅に到着したところまででした。
中編では小淵沢駅から、高原線として有名なJR小海線に乗ります!
小淵沢→野辺山
というわけで相変わらず混雑している改札口を通り、小海線ホームへと向かいます。
乗車するのはオンシーズンで運行される臨時普通列車「
八ヶ岳高原列車」。
ホームにはすでに列車が入線していました。しかし
すでにお客がビッシリ!とても座る座席などありません。ぐぬぬぬ、小海線などローカル線で閑古鳥が鳴いていると思っていましたが、さすが夏の高原線。侮れぬ。
ちなみにちょっと列車を紹介しておくと、この列車はキハ110-114というナンバーの通り、キハ110系気動車の100番台になります。
気動車でありながら電車並みの高性能を有する車両で、急勾配の多い山岳路線では重宝されています。
実は2016年の関東・東北一周の旅の4日目で、同じ100系・110系シリーズに乗ったので記憶に残っていたのです。
旅行記は放置されているけれども。あちらでは青い森鉄道・JR大湊線直通の快速「しもきた」として運用されている列車に乗車しました。
ホームには駅弁屋さんもあって結構賑わっていました。私は駅弁を求めてわざわざ改札を出ましたが、ホームにもあったのね…。
さて列車の発車時間になりました。
いよいよJR小海線、スタートです!
12:28 小淵沢 発 JR小海線 八ヶ岳高原列車5号(野辺山行き)駅名標にも独自のデザインのものが使われています。
JR小海線に乗るのはもちろんこれが初めて。高原鉄道と聞いてずっと乗りたかったんです。スイスのユングフラウ鉄道にもいつか乗りたいと思っているんですがさすがに遠すぎるので、まずは国内から。
さて路線図を載せていますが、JR小海線は山梨県の小淵沢駅から長野県の小諸駅に至る鉄道路線です。別名八ヶ岳高原線とも。
さて小淵沢を発車した列車は高原線の名の通り、いきなりぐんぐんと高度を上げていきます。
眼下には先ほど通ってきた中央東線。1 kmほど並走した後、180 °進行方向を変えて八ヶ岳高原へと向かいます。
甲斐小泉、甲斐大泉と列車は停車。ホームに咲く花がやたらと鮮やかで和みます。
野辺山の一つ前の駅、清里駅に到着するとお客さんが一斉に下車していきました。
登山姿の人が多いところを見ると、この清里駅はトレッキングやハイキングの入り口になっているのかな?
さて、清里駅を出ると注目すべきスポットが左手に現れます。写真を撮る準備をしてください。
それがコレ!
JR鉄道最高地点の標識!標高1,375メートル!何を隠そうJR小海線は、
全国のJR路線の中で最も高い標高を走る鉄道なのです。
「なんだ、最高地点と言ってもたかだか標高1,300メートル程度か」などと罰当たりなことを言ってはいけません。
このくらいの高度になると高山病とは言いませんが酸素濃度も低くなってきますし、温度は気温減率に従って確実に下がります。
分かりやすいところで、100mごとに気温は約0.5℃下がると考えてもらえば良いかと。1,300 mでは下界と比べて6.5 ℃低い計算。
参考に、私が
九州一周の旅でJR肥薩線の矢岳駅に行ったときに標高536.9 mでこれは肥薩線の最高高度だ、と胸を張って言いました。
それでも500 mですから、小海線はその2倍以上の高度です。
まだピンと来ない?分かりました。関西の人向けに言いましょう。伊吹山頂上とほぼ同じ標高です。
比叡山や蓬莱山や六甲山よりもはるかに高い高度です。伊吹山の山頂に鉄道があると考えれば、高さが伝わるでしょうか。
そしてこのJR鉄道最高地点は、なんと
中央分水界でもあります。すなわち日本の太平洋側と日本海側とを分かつ分水界で、
太平洋側と日本海側の境と言ってもいいです。
その線上の尾根にいると考えるとゾクゾクしてきますね。
さてJR鉄道最高地点を通過して今度は右側の車窓に
怪しげな構造物が見えてきました。あれは…。
!?あれこそが私が次に目指す地点です。
13:00 野辺山 着この野辺山駅こそが、
JR全線全駅の中で一番標高が高い駅です。標高1,345.67 メートル。2が飛んでいると覚えれば覚えやすいです。
線路に架線が張られていないことから分かる通り、小海線は非電化路線です。
都会の若い子なんかは列車=電車として認識していて、気動車だろうが機関車牽引列車だろうがまとめて電車と呼ぶ傾向にありますが、常識的に考えて電化されていない列車は電車とは呼べませんよね。
さてその電車、もとい気動車の八ヶ岳高原列車5号。ここ野辺山が終着です。
こちらがJR野辺山駅の外観。なんだかこぢんまりとしてかわいらしい見た目をしています。
さてこの先ですが、先ほど列車から見えた謎の構造物。あれが私の目的の場所です。
なので野辺山駅から徒歩で、その場所に移動をします。
野辺山→野辺山宇宙電波観測所
徒歩と言ってもルートはごく簡単。駅を出て左に曲がった後は延々まっすぐです。
さて野辺山駅に着いた時からうすうす感じていましたが、こうして歩き出してより強く感じます。
めちゃくちゃ涼しい。8月中旬の京都というのは、
それはもう地獄です。盆地の宿命として夏日真夏日は当たり前、
猛暑日連発の日々です。35 ℃を超えなかったら万々歳、38 ℃までは覚悟といったところ。
そんな灼熱の京都から標高1,300メートルの高原地帯にある野辺山にきて、その涼しさに感激しました。
これは軽井沢などが避暑地として有名なのも分かる。カラッと過ごしやすい!空気がベタついていない!
涼しいので徒歩の移動でも苦痛ではないです。花の写真などを撮りながらぶらぶらお散歩。
こうして案内板があるので迷いません。(まあ一本道なので迷いようもないのですが)
塗りつぶされているところにはたぶん太陽という文字が入るのかな。
右を見ると広い裾野の特徴的な山が。たぶんあれが八ヶ岳ですよね?また曇ってるし…。
しかし人っ子一人いない田舎の道路をぶらぶら歩くってなかなか非日常でいい気持ちです。涼しいから心地よいし気分も晴れやかになってきました。
そしてついに到着です。私が目指していた場所とは何を隠そう
「国立天文台 野辺山宇宙電波観測所!!」(え、知っていた?まあタイトルでネタバレしてますしね…)
野辺山宇宙電波観測所のことを知っている人はそう多くないと思いますが、その筋の人には有名な施設です。
私は宇宙・天文をテーマにした
「宙のまにまに」というマンガでこの施設を知り、ぜひ一度行ってみたいと昔から思っていました。
このシーンです。ずっと来たかった場所に来れて感無量。
野辺山駅からは距離にして2.2 km、時間にして25分といったところ。まあ運動不足な私でも歩ける距離です。
さて入場。
入場は無料ですが、一応守衛所でパンフレットを貰うついでに受付をします。
入場の際にはくどいほど
「携帯電話は電源を切るか機内モードにしてください」と言われます。
野辺山宇宙電波観測所はその名前の通り、宇宙からの微弱な電波を観測する施設です。有害な電波を発射する携帯などが好ましくないのは自明です。
さてこちらが案内図。
入ってまずあるのが日時計。昔は学校なんかにもあったんですが最近は見ないですねえ。
さて先ほど宇宙からの電波を観測すると言いました。その観測機器が、コレです!
か、かっこえええええ!!!
ミリ波干渉計です。
後ろに回るとさらにカッコイイ。メカっぽい感じがグッド。
向日葵が植えてある場所を発見。恰好の撮影スポットとばかりに、向日葵とミリ波干渉計が一緒に映る構図を狙って撮ってみました。
出来栄えは、ま、まあ…。
野辺山宇宙電波観測所では大きな望遠鏡のほかにも、かわいらしいサイズの装置がたくさん並んでいます。
案内によると名古屋大学の電波へリオグラフらしい。
ヘリオ(ヘリオス)は太陽を意味する事から分かる通り、太陽専用の観測機器です。
太陽圏をヘリオスフィアと言ったりボイジャーがヘリオポーズに到達したりとかいうときの、あのヘリオスです。
電波望遠鏡とは?という内容の説明が。要するに可視光線では見えないけれども、電波で観測すると実は多くのものが見えてくるよ、というお話。
画像はたぶんメシエ51、子持ち銀河。
パラボラでお話ししよう、という名前の置物が。
パラボラが波を一点に集める性質を利用して、奥の人が喋った声が手前側から聞こえてくるという。
1点に集めるということは逆に言うと、1点から放射された波がパラボラの面に当たると一定の方向に進むという事になるわけですね。
私も横に立って盗み聞きしていみましたが、奥の人の声が結構ガンガン響いてきてびっくりしました。
見えない電波を見えるようにする方法が乗っていました。
よくある勘違いとして、別にパラボラアンテナが電波を受信しているわけではありません。あくまでパラボラはあの形状を利用して、電波を集めているだけ。受信機は別にあります。
この画像は大変興味深いですね。宇宙は物質の存在しない無の世界みたいに思われがちですが、実は多種多様な原子や分子やイオンが星間空間に漂っています。
地球上では見ないようなものもありますね。
45m電波望遠鏡
さていよいよ、列車から見えたあの巨大な構造物のそばに行ってみましょう。
徐々に近づいていきます。あれひょっとしてめちゃくちゃデカくないですか
これが対空掃射砲 「ニーベルング」です!!軌道上からの揚陸部隊も一網打尽です!!もとい。これは野辺山宇宙電波観測所の目玉、
45m電波望遠鏡です。
しかしデカい!!!デカすぎて近寄りすぎるとファインダーからはみ出てしまいます。
宙のまにまに6巻にも、この45m電波望遠鏡は登場します。このアングル、
まさに今私が立っている場所と同じなのが分かりますでしょうか。
根元には構造物を支える巨大な支柱や配管などが。
近づいてみると視界のほとんどがこの巨大望遠鏡で覆われてしまいます。
45m電波望遠鏡の簡単な内部構造の説明図が。電波は鏡で曲げるしかないので、一番下にある受信機に導くために何度も鏡で曲げられている図が示されています。
潜水艦の潜望鏡や、カメラのファインダーなんかと似てますね。
さて巨大望遠鏡そばの施設の中へ。
「氷はなぜ水に浮くのか?」有名どころのギモンですが、ちゃんと答えられるでしょうか?
正解はこちら。イメージはしやすい話ですが、そもそも固体になると水素結合に方向性が生じるのは何故なんでしょう。
全人類の希望、核融合炉の実験装置の紹介が。
2017年にもなって、化石燃料を燃やしてお湯を沸かすとか前時代的すぎるでしょう。早く人類は次のステージに進むべき。そしてこんなどこにでもあるゴミみたいな惑星から出て、早く宇宙に進出していくべき。
さて、これで野辺山宇宙電波観測所は一通り見学して堪能できました。実に面白い内容の施設だったし、私自身初めて知ったこともあって勉強になりました。
見学を終えると雲の切れ間から晴れ間も。やっぱり青空をバックにして撮影したほうが映えますね。
ついでなので野辺山宇宙電波観測所の横に併設されている施設にも寄ってみます。
内部には食堂が。色々歩き回ったのでお腹は空いていますが、私はすでに昼食を持っていますのでここはパス。ムダ遣い禁止。
で、でもせっかくなので……。
高原ソフトクリームを購入!
爽やかな高原で食べるソフトクリームは最高ですな。
この謎の施設は屋上が解放されていて、自由に登ることが出来ます。やっぱり高原だから高いところから見たいですよね。晴れていたら八ヶ岳が綺麗に見えそう。
振り向くと先ほど見た45m電波望遠鏡の雄姿も。今はほぼ真上を向いていますね。真上ということは冬の星座群の方角でしょうか?
さて、お昼ごはんです。1日目前編で、小淵沢駅で有名な駅弁
「元気甲斐」を購入したことを覚えているでしょうか?
早速開けていきます!
まずはお品書きから。2段重ねの構成。この時点で、その辺の駅弁とは比べ物にならない破格の高級感が漂っています。
これが!!!元気甲斐です!!!私のボキャブラリーの無さでこの駅弁を紹介すると営業妨害になりそうなので、宮脇俊三氏の著書「途中下車の味」から該当部分を抜粋して宣伝させて頂きます。
「大同小異、通り一遍の駅弁が全国にはびこるなかで、この「元気甲斐」は異色にして抜群だからである」
「二段重ねで、上段は京都の某料亭の指導によるクルミの炊き込み飯を主体とした会席料理、下段は東京の某店が手ほどきした栗とシメジご飯その他。オカズの数は20種にもおよび、もちろん各少量ながらよく吟味されている。ご飯も朴葉で包んである。」
「私は職業柄、この駅弁を取り寄せてもらい、試食する機会を得たが、「駅弁」の水準を上回る、というより、質的に断然ちがうものと感心せざるを得なかった」
いかがでしょう。もう涎が止まらなくなっているのではないでしょうか。
こんな文章を読まされたら買うしかないでしょうに。
これが上段です。メインはクルミご飯。そしてヤマメの甲州煮、蕗と椎茸と人参の旨煮など。
続いて下段。栗とシメジのおこわの上にアスパラの豚肉巻やヤマゴボウの味噌漬けなど。
特に鳥の柚子味噌和え、これが絶品でした。少量なのがもどかしい。
「元気甲斐」、大変満足しました。
価格は1,600円なので、駅弁として、昼食代としてはかなり高額な部類になりますが、機会があればぜひ一度食べてみて頂きたい商品です。
キリがいいので1日目中編はここまでとします。
後編では野辺山駅に戻り、JR小海線完乗を目指します!
1日目 後編へ続く
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