ループと三段式スイッチバックのJR木次線 廃止直前のJR三江線+呉訪問 1日目中編
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ハル
さて前編ではJR伯備線とJR芸備線に乗って備後落合駅に到着したところまで。
中編では木次線に乗って日本海側に抜けます。
備後落合駅を探検

恥ずかしながら、私の中でこれまで木次線の印象は非常に薄かったです。ただの陰陽連絡のうちの一つなのだろうと。閑古鳥が鳴く、ただのローカル線なのだろうと。
とんでもない。見どころ満載でした。ちなみに木次はキスキと読みます。キスカではないです。

ちなみにここまで乗ってきた列車がこちら。この列車は14:25に備後落合に到着して、14:37に新見まで折り返します。
「ほう、わずか12分で折り返すとは郊外の路線並だな。意外に芸備線は栄えているのか?」
などと勘違いしてはいけません。

えきから時刻表-備後落合駅
JR芸備線上りの時刻表がこちら。
ご覧のように備後落合発、新見行きの列車は1日にわずか3本だけです。そのうちの貴重な1本がコレ。こいつに乗り逃すと極寒の備後落合駅で6時間弱待ちぼうけになります。


乗り換えで少し時間があります。駅を散策してみましょう。
雪景色、山の中の駅とあって高山本線の猪谷駅を思い出します。


駅舎の中にもお邪魔しました。かつてのサボや写真など。雪の中を走る蒸気機関とかロマンの塊すぎるでしょう。
あと右下にこっそり書かれている「ごごの14時 全員集合」という一文にも要注目。まさに今がその14時なわけですが……?

私がここまで乗ってきた列車の対岸には、三次方面への芸備線の列車が待機しています。
この列車に乗ると、この先の接続が妙に良くて、今回の旅の目的であるJR三江線に入ることができます。具体的には
14:43 備後落合→16:03 三次
17:02 三次→ 18:39 浜原
19:03 浜原→21:27 江津
と。しかし見てもらえば分かるように三江線区間はほぼすべてが日没後で真っ暗。これでは乗ったとは言えないし、乗る意味もありません。
よってこの案は却下。いろいろ考えた結果、今回は木次回りで江津まで向かい、江津発の始発列車に乗ることにしました。我ながら名案。

さて駅舎側の木次線ホームでは、地元のボランティアの方が木次線をざっくり紹介してくれます。
木次線の最高地点は三井野原駅で標高728 m。三井野原駅から出雲坂根駅までは30パーミルとかなりの急勾配になっている様子。
鉄道+急勾配=? と言えばもう分かりますよね。アレです。

アレも重要ですが、木次線を木次線たらしめるのはやはりこの異様なループ線でしょう。詳しくは後述。

木次線の列車が入線してきました。この列車は11:18に宍道駅を出て、14:33に備後落合に到着。わずか数分で折り返し、宍道行きに化けます。
ちなみに宍道はシンジと読みます。JR東日本、奥羽本線の碇ヶ関駅と並べるといい感じ。

到着した木次線の列車から大量のお客が下車して、三次行きの列車に続々と乗り込んでいきます。あれやっぱり全員三江線目当てだよね。うわぁあんな混雑の中列車に乗るとかどう考えても無理。ありえません。

さて、ここで一度辺りを見渡してみたいと思います。
向こうのホームには「芸備線 新見行き」と「芸備線 三次行き」の列車。

そして我が「木次線 宍道行き」の列車。
3方向に向かう列車が、今こうして一堂に会しています。これは偶然ではありません。
わざわざ、同じタイミングで3方向の列車が落ち合うようにダイヤが作られているのです。
列車が落ち合うから備後「落合」駅。
面白い。実に面白いぞ!3路線が一堂に会する運用はなかなかない。駅名もシャレています。


まあ、上記の豆知識は事前に知っていたのではなく、ボランティアのおじさんと備後落合駅で貰ったパンフレットで知った知識ですが。
「備後落合駅はJR西日本の岡山支社・米子支社・広島支社の境界の終着駅としてすべての列車が折り返す駅です。3つの路線が落ち合うため「落合駅」という名前が付きました。」

ちなみにこれもパンフレットに書いてある内容ですが、備後落合は上記のような事情から鉄道の一大拠点だったようです。
そのおかげで今からは考えられないほど大きな駅で、設備も数多くありました。今ではそのほとんどが残っていませんが、唯一転車台だけは現存しています。

その名残(残骸)がこちら。転車台はターンテーブルとも言いますが、列車の進行方向を変えるための装置。
今でこそ列車は前にも後ろにも運転席がついていますが、昔の蒸気機関は当然「我に退路などなし!前進あるのみ!」なわけで。折り返し運転を行うためには転車が必要だったのです。

ちょうど私がここまで乗ってきた芸備線の列車が発車していきました。3つの列車が向かい合うのはごく短い間だけです。


そして私が乗る列車。なんとキハ120型の1号車でした。100両近く作られた中の記念すべきネームシップ。これは実は珍しい体験です。

ここまで長々と備後落合駅と木次線について語ってきましたが、お待たせしました。いよいよ木次線の列車が出発します。
写真に映っているのがボランティアのおじさん。確かこの方は元国鉄マンだったように記憶しています。寒い中、我々旅行客に丁寧な説明をしてくださってありがとうございました。これからも元気で頑張ってください!
備後落合→宍道 (JR木次線)

14:41 備後落合 発 JR木次線 普通(宍道行き)
車窓はすっかり雪化粧。

備後落合の駅名標で「ユキ」という駅名を見て、どんな字を書くのだろう?雪?幸?とか考えていましたが、油木でした。ヤシの木でもあるのかな?
駅舎は壊され、ホームのみが残る寂しげな駅。

でもこの歴史を感じる駅名標はグッド。遠い昔からずっとここにあったんだろうなあと考えると時間の流れを実感できます。


先ほどからチラチラと雪も見えていましたが、三井野原駅に近づくと雪の量がにわかに増えてきました。雪に埋もれた白菜(?)も。
わざと雪中で保存しているのか、単に収穫が面倒くさくて放置しているだけなのか、どっちなんだろう。

列車は三井野原駅に到着。先ほど木次線で最も標高が高いと言いましたが、実はJR西日本の駅の中で最も標高の高い駅です。標高727 メートル。
ちなみにJR全線の中で最も標高の高いのはご存じ小海線の野辺山駅。あちらは標高1,345 メートルなので三井野原駅の倍近くあります。

雪の量がかなり増えてきました。この記事を書いている今(2018.1.25)でこそ日本中が大雪に襲われて青森で3 メートルの積雪とか言っていますが、この旅行中は12月下旬。京都などでは雪のかけらもない時期です。

三井野原駅を出ると一気に車窓が開けます。まず手始めにド派手な赤い橋。三井野大橋と言います。
これも立派なアーチ状で見事なんですが、真骨頂はここから。

!?

この異様な巨大ループ線。これこそがJR木次線の一押し車窓スポット、奥出雲おろちループです。名前はもちろんヤマタノオロチより。まさにとぐろを巻いた大蛇のようにも見えます。
ループ線はもちろん急勾配を移動するためのアイデアですが、こんなド田舎にこんな巨大な建造物を建てるとか、色々な意味で凄いです。高所恐怖症の人は見るだけで悶絶しそうだし、真冬で道路が凍結しているときにこんなところは通りたくないです。絶叫アトラクション(安全装置なし)に化けていそう。

さて木次線もループ線に沿うように高度を下げていきます。間近に迫るおろちループ。

ぐるっと回ってずいぶん高度を下げてきました。目前に見えた赤い三井野大橋もあんなに小さく遠くになりました。
しかし、まだまだ高度を下げる必要があります。そこでとっておきのアレです。

ふと下を見ると左側に並行して線路が見えました。もう分かりますよね。スイッチバックです。進行方向が変わるだけのなんちゃってスイッチバックじゃなく、本物のスイッチバックです。
道路は先ほどのループラインで高度を下げますが、鉄道はスイッチバックを使うわけですな。


急勾配を効率的に踏破するために用いられるスイッチバック方式。線路の途中で運転方向が変わります。
このように運転士さんも後ろの運転台へ移動。


スイッチバックを完了し、列車は別の線路に入って先ほどとは逆側に進んでいきます。すると右側にまた別の線路が見えてきました。
そう、木次線のスイッチバックは驚くなかれ、なんと三段式なのです。そんなロケットや空母じゃあるまいし。


まさかの三段式スイッチバックに驚いていると出雲坂根駅に到着。


表示にもある通り、三段式スイッチバックの途中にある駅。JR九州の肥薩線に乗ったときを思い出します。まさか京都から列車で数時間のところにこんなアトラクションがあったとは。
また、この駅は延命の水も有名です。地元の人から長寿の霊水として愛されている水。遠方から汲みに来る人もいるとか。

先ほどは踏切を渡るときに右側に線路があったんですが、出雲坂根駅で進行方向がまた変わり、やはり右側に線路があります。
写真の左から右へと下ってきて出雲坂根駅に停車、今度は右から左に違う線路に入っています。頭がこんがらがる運用。


スイッチバックを完了し、八川駅に到着。備後落合駅は広島県でしたが、すでに島根県に入っています。

出雲横田に到着。出雲横田では対向の備後落合行き普通列車と行き違いを行います。
ちなみに15:52発のこの列車が木次線下りの最終列車です。まだ昼なのに。1日に3本しか列車がないから仕方ないね。

亀嵩に到着。松本清張の映画「砂の器」で知った方も多いでしょう。実は作中に登場する駅舎はさっきの八川駅なんですけどね。

出雲三成に到着。三成という名前ですが某戦国武将とは関係ない……はず。あの人は滋賀県出身だし。

出雲八代に到着。島根県なので出雲が連発します。どうですこの昔ながらの改札。最近はこのタイプの改札も探さないと見つけられなくなりました。


木次駅に到着。到着時刻は16:42。発は17:00なので18分ほど停車が行われます。せっかくなので駅舎を見ておきましょう。

我が列車が到着するとほぼ同時に対向の出雲横田行きの列車が発車。相対式ホーム2面2線の立派な交換駅です。

改札にも貼ってありますが、木次線沿線は出雲神話の舞台。かの有名なヤマタノオロチ伝説ゆかりの地です。
木次駅は伝説をモチーフにしたトロッコ列車、奥出雲おろち号の発着駅でもあります。見た目はJR北海道のノロッコでおなじみのアレ。


木次駅の外観。ご覧のように立派な駅で、木次線唯一の直営駅、かつみどりの窓口設置駅です。
こんな山奥にこんなに立派な駅があるとは、にわかには信じられません。

でももちろん自動改札などというハイテク機器はありません。
列車の発車時刻が迫ってきたので車内に戻ります。
さて木次を出ると急に辺りが暗くなってきました。つるべ落としと言いますが季節はすでに冬。17時を過ぎるとあっという間に暗くなります。冬の旅の難点。


17:36 宍道 着
真っ暗な中を30分ほど進むと終着、宍道に到着。備後落合からは3時間の長駆でした。
宍道駅に到着したところで1日目中編は終了。後編では本日の目的地、江津を目指し日本海側を西に進みますが、なんと、乗る列車を間違えるという大ポカをヤラかしました。その模様は後編にて。
1日目 後編へ続く

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